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道東越冬隊の記録
ナチュラル・アウトドアライフ」4.極楽温泉ライフ(1)公衆浴場を楽しむ
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北海道滞在中の一日のしめくくりは温泉。い〜いお湯につかってリラックスする時間は、ふたりの最大の楽しみのひとつ。北海道にはたくさんの温泉が点在していて、安い利用料で入れる公衆浴場もたくさんあります。

私がはじめて連れて行ってもらった公衆浴場は、弟子屈町の川湯公衆浴場。川湯温泉は、近くの硫黄山を熱源とする温泉で、町には硫黄の匂いが立ちこめています。昔から湯治に訪れる人たちでにぎわっていたそうです。

夫はこの公衆浴場が大のお気に入りで、「い〜いお湯やねん」と入る前からごきげんでした。入浴料は1回200円(99年2月当時)。お得な回数券もあります。

はじめて来たとき、正直いって私は「げっ」と思いました。なぜって、古くて、お世辞にもきれいとはいえない建物なんですよ。城崎や白浜などの温泉旅館の手入れの行き届いた大浴場しか知らない私としては、かなりの抵抗が・・。

脱衣所には、荷物を置く木製の棚と、シートの破れかけた黒いソファ、いかにも古そうな家庭用の体重計。鏡はあるけれど水道はなく、ドライヤーなんてもちろんなくて、使えるのかどうか分からない壊れかけたコンセントがひとつ。そして手作りの「ご意見箱」とエンピツがコロン・・・。

浴場には湯船がふたつ、鏡と小さな蛇口が3〜4つ。シャワーはありません。年期の入った湯おけと腰掛けが数個。温泉独特の硫黄の匂いがします。

入って蛇口をひねってみましたが出が悪くて、なかなか湯おけにたまりません。仕方なく大きいほうの湯船のお湯を体にかけ、まずは顔を洗おうと、お湯をくんで洗顔料を泡立てるのですが、全然泡がたちません。「なんでやろ?」と思いつつ少ない泡でむりやり顔を洗い、お湯で流そうとしたら、顔がヒリヒリと痛いんです。もうびっくり。おそるおそる湯船に入っても、顔ほどではないのですが肌に刺激を感じます。

なっなんだこの温泉は! きつすぎる!

風呂上がりに夫と合流して、「な、い〜いお湯やったやろ」と聞かれても、「う〜ん・・・」と元気のない返事しかできませんでした。

ほんとうに、何も知らない都会っ子は情けないなと思いました。川湯温泉のお湯は酸性が強いために、石鹸の利用はできないのだそうです。後から聞いたり、地元の人が入浴している様子を観察したところによると、もう片方の湯船が「真湯」というぬるめの普通のわき水で、このお湯や蛇口から出るお湯で体を洗い、温泉のほうにはゆっくりじっくり、長くつかるものだそう。最後にぬるめの真湯につかる人も多いです。そうすると湯冷めしにくいのだとか。

滞在中、何度も通ううちに私もだんだんとそのお湯と公衆浴場の雰囲気になじんできました。一緒になった地元のおばあさんたちにさりげなく挨拶ができるようになったり、「どの蛇口の出が一番よいか」なんて情報ももらえるように。熱い温泉にのぼせそうになったらぬるめの真湯に入る、なんていうツウな入り方もマスターしました。いつしかはじめに感じた刺激も「なんともいえず気持ちよい」という感覚に変わっていきました。

ちょっとおじさんぽいですが、湯船につかるときに思わず目を閉じて「うぉ〜お」とうなりたくなるような気持ちよさ。体に目に見える変化はないけれど、北海道滞在中の元気の源のひとつは、この「公衆浴場パワー」のような気がします。老後はいい温泉のある町に住みたい、なんてことも思いました。

すっかりこの浴場の利用にも慣れてきた頃、気になっていた「ご意見箱」に投書してみようと思いつきました。
『ドライヤーを使いたいのですが、コンセントが壊れかけていて怖くて使えません。直してもらえませんか。』

それから1年して再び訪れたとき、コンセントが直っていたのがとても嬉しかったことを覚えています。

近代的な設備の整った温泉も快適だけど、こんな公衆浴場にはそれとはまた違った心地よさがあるものですね。間違っても鉄筋コンクリートの近代的な味気ない浴場には変わってほしくないと強く思います。

(2000.12.16配信「FINE NEWS」掲載)