はじめての「車中泊北海道旅行」の準備を始めた頃、まず知りたかったのは朝晩の洗顔の場所でした。終日氷点下の気温が続くところで、眠る時以外ほとんど屋外で過ごすわけですから、洗顔後と肌の手入れをしっかりしなければ、大阪に戻る頃には恐ろしいことになっているに違いない! と思ったのです。こういうところ、男性に比べると女性って面倒ですよね。
北海道の暮らしのすべては、夫に様子を聞くしかありません。
「歯磨いたり、顔洗ったりするのは、どこ?」
「夜は公衆浴場に行くから、そこで。朝は車停めてるところの近くのお手洗い。
だいじょうぶ、近くにお手洗いがある道の駅に車停めて寝るから」
「・・・ということは、朝は、水で、洗顔するのね」
「そうね。ま、ちょっと冷たいかもね」
夜明け前の駐車場のお手洗いの水道って、どんなに冷たいんだろうか。ちゃんと水は出るのかなあ、鏡はあるのかなあ、・・・といろいろ文句を言いたいところですが、夫は夫で私のためにいろいろと考えてくれているのです。男ひとりなら、洗面やトイレの心配はあまり必要ありません。私が同行することになったために、彼は「24時間使えるお手洗いが近くにある駐車場」を探さなければなりませんでした。あまりわがままは言えません。
とりあえず持っていく化粧品を揃えることにしました。まずは洗顔料。それから日焼け防止のための頑丈メイクをしっかり落とせるメイク落とし。化粧水はとにかく保湿性の高いもの。ファンデーションは手早く付けられるパウダータイプで、日焼け止め効果の高いもの。日焼け止め乳液も買いました。
購入した先は、スキンケアには定評ある海外の一流ブランド。高い化粧品って、効果がありそうな気がしますよね。けっこうなお値段になりました。
さて、高級化粧品を一式持って、いざ北海道へ!
・・・しかし、北海道暮らしが始まってみると、高いお金を出して買い揃えた化粧品たちの出番はあまりありませんでした。
「てっとり早くすませてしまいたい」と思い、朝晩の洗顔は、冷たい水でも泡立ちがよく、メイク落としもできるものを現地のスーパーで購入しました。洗顔後のお手入れも、ニベアクリームを買ってちょこっとつけるのみ(化粧水、乳液、保湿クリームと、何種類も付けるのが面倒になったのです)。日焼けするのが嫌で、ファンデーションはしっかりと付けていましたが、化粧直しをこまめにするわけでもなく、夕方にはすっかりとれていたように思います。
必要最低限のスキンケアしかしなかったにもかかわらず、滞在中の私の肌はすこぶる元気でした。大阪で暮らしている時より、肌がみずみずしいとさえ感じ、気になったことといえば日焼けして、少し赤くなったことぐらい。そのうえ、時々出没する大きな吹き出物がほとんど現れなかったのも驚きでした。
お金も手間もかかっていないのに、こんなに調子がいいなんて。やはりストレスのない、のんびりした毎日が体にいいんでしょうか。
夜明けとともに起き出して、太陽が沈んだら眠る健康的な生活。
時間に追われることのない日々。
食事は1日1〜2食だけれど、野菜をたくさん食べてヘルシー。
甘いお菓子類はほとんど食べない。
外は寒いけれど、空調のきいたオフィスの乾燥した風に悩まされるよりは、ずっと快適。
たしかに、すべてが体によさそうですよね。
それに、一日の終わりにつかるお風呂は天然温泉。毎日温泉に入っているのだから、体もご機嫌なはずです。出発する前は、周囲から聞く過酷な自然の様子にびくびくするばかりでしたが、実際に来てみると、実はとっても体が喜ぶぜいたくな時間がたくさん待っていたのでした。
(2000.12.02配信「FINE NEWS」掲載)
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