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道東越冬隊の記録
「ナチュラル・アウトドアライフ」【最終回】15.北の大地に春が来る
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『北海道の冬は長く、厳しい』

北海道の自然について書いた文章によくあるコトバです。本当にその通り。何ヶ月もの間、氷点下の気温が続き、深い雪に埋もれているのですから。

3月になっても道東はまだまだ寒い日が続きます。大阪ならそろそろ梅のつぼみが膨らみはじめる時期です。北海道で花が咲き始めるのは、5月の連休の頃だと聞きます。

でも、目をこすってよーく見てみると、3月初旬でもあちこちに春の気配を見つけることができるのです。

夫がハクチョウの写真を撮っている間、私が散歩していた湖畔の林。エゾリスの追いかけっこに遭遇した林です。北海道に来てすぐの頃は、歩こうとすると膝上まで雪に埋まってしまったものでした。毎日通ううち、私たちの足跡は小道となり、歩きやすくなってくるのですが。

3月に入ってもその林は一面真っ白なのですが、何かが違うような気がします。目を凝らしたり、逆に広くを見渡してみたり。何が違うんだろう?

そこで、気づいたのです。「緑の量」に。

それまで雪に隠れてほとんど見えなかったクマザサの葉が、ずいぶんたくさん見えているのです。雪が知らぬ間に解けてきたのか、クマザサが春を感じてにょきにょき起きあがってきたのか。来た頃には見えていなかった緑です。

さらにあたりを見回してみると、まだありました、春の足音。
鮮やかな黄緑色の「ふきのとう」が、雪の間から顔を出しているのです。

そういえば、空の青さも、雲のかたちも、時折吹く風も、なんとなく変わってきているようです。凍るような寒さに体を縮めていた数週間前とは大違い。
大きく伸びをしたくなるような、気持ちよさを感じます。

この先、寒い日や暖かい日を繰り返しながら、少しずつ春に向かっていくのでしょう。雪がとけて道路が水浸しになる日が続いたり、緩んだ気温で雪崩が起こってしまうこともありと、数々の試練を乗り越えながら。

5月になると、北海道ではすべての春の花がいっせいに咲くのだそうです。桜に梅にチューリップ。冬が長く厳しい分、春の到来を花々が盛大に祝うようですね。ハクチョウたちは北へと帰っていきます。道東は白から緑へ。観光シーズンがやってきて、にぎやかになります。釧路川のカヌーツーリングには緑がきれいでさわやかな6月がぴったりだと、地元の人が教えてくれました。

そんな明るい春を目にすることなく、私たちの北海道車中泊の旅は終わります。きっと素晴らしいであろう花咲く北海道、緑の北海道を見たい気持ちをおさえて、大阪に戻るのです。

5月になりましたね。そろそろ北海道では春の花が咲き乱れているのかな。

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「ダンナのライフワークの現場は、妻としては一度は見ておかなあかんかな。向こうの生活が合えへんかったら、悪いけど次からは行くのやめよ」

とりあえず一度だけ。そんな気持ちで出かけてみた真冬の道東車中泊旅行。気がつくともう3度の冬を北海道で過ごしています。

北海道の冬の大自然は厳しいけれど、反面、あたたかさやおおらかさみたいなものも兼ね備えているように思います。そして、ほんとうにたくさんのことを私に教えてくれました。

いままで大して興味を持っていなかった環境のこと、生き物のこと、さまざまに表情を変える空、太陽、風のこと。それから食べて眠って起きるといった人間の基本的なところのこと、今までの自分のこと、これからの自分のこと、家族のこと、友達のこと、仕事のこと、便利な都会の暮らしのこと、「生きる」ということetc.

もしかしたら、今まで生きていたなかで、一番いろんなことを考えた時間だったかもしれません。大阪でぐるぐると忙しく、毎日を生き急いでいたなかでは、決して思いもしなかったことを、たくさん感じました。

便利な暮らしイコール幸せな暮らしではないんだな、と思いました。
裕福な暮らしと恵まれた暮らしも同じではないな、とも感じました。
人間はこの大きな地球という星の上に暮らす小さな生き物にすぎないんだな、ということを実感しました。

たくさんの「忘れてはいけない大事なこと」に、冬の北海道は気づかせてくれたかな。

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北海道に春がきたところで、この連載はおしまいです。
約5ヶ月間、おつきあいいただき、ありがとうございました。
webはこれからも続ける予定です。ぜひ遊びにきてください。

(2001.5.5配信「FINE NEWS」掲載)